長引く咳

風邪

風邪は「感冒」や「かぜ症候群」とも言われ、ウイルスや細菌の感染によって、鼻や喉の粘膜に炎症が起こると咳、鼻水、鼻づまりなどの症状が起こります。
風邪の原因となる代表的なウイルスは、ライノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルスなど様々です。咳は、発症から10日程度で50％の方に改善がみられます。90％の方は、25日以内に症状が改善していきます。
風邪が治った後も気道が過敏な状態が続くと、慢性的に咳の症状が出続けることがあります。風邪の後も咳だけが続く状態を『感染後咳嗽』と呼び、咳が続くときは気管支だけでなく肺の検査が必要となる場合があります。

副鼻腔炎

黄色く粘り気のある膿性鼻汁が大量に分泌されて、鼻水や痰が喉の方に流れる後鼻漏によってゲホゲホと痰が絡んだ咳が出ます。人によって鼻づまりや、頭痛、顔の圧痛といった症状が起こることもあります。
副鼻腔の粘膜と気道の粘膜は共鳴するため副鼻腔炎による咳は、長引く傾向があります。副鼻腔炎の治療を行うことで、咳の症状も改善していきます。急性副鼻腔炎は、6割の方が自然治癒するといわれていますが、再発や慢性化することもあるので、必要に応じて抗菌薬でしっかり治すことが大切です。

クループ症候群(急性喉頭気管支炎)

ウイルスや細菌の感染やアレルギー反応によって気道が狭くなりケンケンと乾いた咳やしゃがれ声の症状が起こります。主に、生後半年から3歳くらいの乳幼児に起こりやすい疾患です。
呼吸をするときに、苦しそうなヒューヒューという音が聞こえます。重症化すると、呼吸に合わせて鎖骨の上や肋骨の下がくぼむ陥没呼吸の症状が現れます。
1歳未満の赤ちゃんは、酸素投与が必要となる場合があります。3歳頃までのお子さまに、喘鳴や陥没呼吸の症状が出ているときは、すぐに医療機関を受診しましょう。

気管支炎・肺炎

気管支炎・肺炎は、風邪などをきっかけに上気道に起こった炎症が、気管支や肺にまで広がってしまう疾患です。炎症が広がると、咳や発熱、痰の症状が強くなり回復にも時間がかかります。
細菌感染が疑われる場合は抗菌薬治療を行います。呼吸状態によっては、酸素投与ができる病院への入院が必要となる場合があります。

気管支喘息

咳喘息

ヒューヒューゼーゼーという喘鳴や粘り気のある痰などが無く、咳の症状が2週間以上続く状態です。気管支喘息の治療と同様に気管支拡張薬による治療が有効です。

百日咳

百日咳とは、百日咳菌に感染して起こる感染症です。潜伏期間は7～10日ほどです。風邪に似た症状が1～2週間続き、その後2～4週間は特徴的な咳の症状が起こります。百日咳の咳は、スタッカートと呼ばれるコンコンと乾いた激しい咳が連続して起こり、咳が落ち着いて息を吸うときに笛を吹くような音が聞こえます。夜間に咳の症状が多くみられます。ひどい咳をきっかけに嘔吐したり、顔が真っ赤になることがあります。
百日咳特有の咳は、1週間から数か月にわたって続き、その後回復していきます。
感染症法で百日咳は5類感染症に分類されているため、感染している場合は保健所に届け出が必要となります。百日咳は、四種混合ワクチンに含まれていますが、ワクチン接種をしていても感染することがあります。ワクチンを打った後に感染した場合、特有の咳症状はあまり現れにくい傾向があります。
咳がひどい状態が長く続くと低酸素血症によってけいれんや脳症、無呼吸発作などの合併症を引き起こす恐れがあります。百日咳の感染経路は家庭内で多くみられるため、同居する家族に長引くひどい咳の症状がでている場合は、早めに検査を受けましょう。

気道異物

気道に異物が入り込んだら、すぐに救急外来を受診しましょう。
気道内(咽頭、期間、気管支)に異物が混入すると、空気の通り道が塞がれて窒息や呼吸困難の恐れがあります。異物が入り込んでもある程度空気が通れる場合は、長引く咳や喘鳴などの症状があります。
異物は、X線で確認できないことがあり、胸部CTや内視鏡による検査が必要になる場合があります。

誤飲と誤嚥の違い

呑み込んだ異物が食道に入ることを「誤飲」、気道に入ることを「誤嚥」といいます。お子さまによくみられる「誤飲」は、声を出すことができれば緊急性は低く、救急外来の受診は不要です。何かを呑み込んでしまって心配な時は、お気軽にご相談ください。また、「誤嚥」の場合は、ひどい咳や呼吸困難の症状がみられます。咳は一過性で終わることもありますが、長引く咳や一度落ち着いたあとに再度悪化する場合は、誤嚥性肺炎を起こしている可能性があります。誤嚥が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

胃食道逆流症

日中に乾いた咳が出る、寝ている時や体を横にしたときに咳が出やすいといった症状は、胃食道逆流症かもしれません。
胃の内容物が食道へ逆流すると、食道の粘膜に炎症が起こりげっぷや咳、胸やけなどの症状が起こります。逆流した内容物が食道の咳受容体を刺激するので、咳が起こりやすくなります。

心因性咳嗽(がいそう)

ストレスや緊張などが気道への刺激となって、乾いた咳が起こります。日中、活動しているときに乾いた咳を繰り返し、睡眠中や集中している時には症状が落ち着いているのが特徴です。
ストレスによる咳かどうかを診断するには、気管支喘息や副鼻腔炎、咳喘息、肺炎、胃逆流性食道炎など他の病気が無いことを確認する必要があります。診断までに時間がかかり、気管支拡張剤や咳止めなどの対処療法もあまり効果がありません。お子さまが心因性咳嗽を発症したときは、治療と併せてストレス発散やリラックスする方法を一緒に探してあげることが大切です。

子どもの咳は、夜間から明け方にかけて特に強く出る傾向があります。
睡眠中は副交感神経が優位になることで、体がリラックスして筋肉が緩むことで気管支が狭くなって咳が出やすくなります。また、夜間から明け方にかけて気温が下がると気管支粘膜が刺激を受けて鼻水や痰が喉に流れこむことで咳が起こりやすくなります。