小児皮膚科疾患

小児皮膚疾患

小児皮膚科疾患大人と比べるとお子さまの皮膚は薄いので、外部からの刺激を受けやすい状態です。さらに汗をよくかくので肌トラブルのリスクも高くなります。
ここでは、あせもやとびひ等、お子さまによくみられる皮膚疾患とその対処方法について詳しくご紹介しています。
お子さまのおむつ替えやお風呂、洋服の着せ替えなどのタイミングで肌の様子を観察しながら、肌トラブルを早めに見つけてあげましょう。

あせも

白色や赤色のブツブツが肌の表面に現れます。あせもの現れ方には個人差があり、ほとんどの場合、かゆみの症状を伴います。

原因

汗が出る穴(汗腺)に皮脂などの汚れや汗が溜まり、細菌が増殖して炎症を引き起こします。乳幼児は、特に汗をかく夏場に発症が多くみられます。あせもが起こりやすい場所はおでこ、首回り、手首、足首、ワキなど汗をかきやすく、肌表面に溜まりやすい場所です。

治療・対処法

あせもは、症状が軽い場合は以下の点に注意しながら患部を清潔に保つことで、数日程度で症状が治まります。

  • 乾燥しないように部屋の湿度を60%程度に保つ
  • お風呂では石鹸を使って体をやさしく洗う
  • 汗をかいたらこまめに清潔なタオルで拭く

汗をよくかく乳幼児の肌着は、速乾性があって汗をよく吸収する木綿の生地がおすすめです。
あせもがひどい場合は、ステロイド外用薬やかゆみ止めで炎症を鎮めて、掻きむしりを防ぐことが重要です。あせもは再発しやすいので、治療後もこまめにスキンケアを行いましょう。

とびひ

とびひは、正式名称が「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ぶ皮膚疾患で、細菌が肌表面の傷などから感染して発症します。飛び火のように、人にうつったり他の部位にうつることから「とびひ」と呼ばれています。
とびひは、感染した部分が水ぶくれやかさぶたとなって現れます。かゆみや赤み、ただれなどの症状を伴います。

原因

虫刺され・あせも・湿疹などにより、肌にかゆみが生じた際に掻きむしってしまうと肌表面に小さな傷ができます。その傷から黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌などの細菌が入り込んで発症します。黄色ブドウ球菌や溶血性レンサ球菌は、全身のどこにでもいる常在菌ですが、小さな傷から菌が侵入するととびひを引き起こします。

治療・対処法

菌の増殖を抑えるために抗菌薬を使用して治療を行います。かゆみの症状が強いときは、抗ヒスタミン薬の服用やかゆみを抑える塗り薬を併用します。なるべく患部を触らないようにしましょう。水ぶくれが破れて中の液が周囲に広がらないように、お風呂の時は石鹸をしっかり泡立てて優しく洗い、しっかり流して患部を清潔に保ちます。家族や周りの人に感染させないために、タオルの共有やプール遊びなどは避けてください。

アトピー性皮膚炎

皮膚に強いかゆみや赤み、湿疹の症状が繰り返し起こる皮膚疾患です。特に、アレルギー体質のお子さまによくみられます。

原因

アトピー性皮膚炎の原因は様々ですが、「遺伝因子」と「環境因子」の二つに大きく分けられます。生まれつきアトピーの要素を持っていて、皮膚のバリア機能の低下やアレルゲンとの接触、外部からの刺激などの環境因子が加わると発症すると考えられています。さらに、精神的なストレスなどが原因で症状が悪化しやすいといわれています。

治療・対処法

アトピー性皮膚炎アトピー性皮膚炎は、短期治療で完治することは難しく、長く治療を継続しながら皮膚の炎症を抑えて良い状態を維持していくことが大切です。皮膚の炎症がひどいときは、ステロイド外用薬を使用して症状を抑えます。かゆみの症状が強いときは、抗ヒスタミン薬を併用します。炎症やかゆみの症状が落ち着いても、皮膚の奥に炎症が残っていることがあるので自己判断でステロイド外用薬の使用を中断すると再発や症状の悪化につながります。ステロイド外用薬は、医師の指導に従い徐々に減量していきましょう。
アレルゲンとの接触を避けることで再発防止につながります。また、皮膚の乾燥を防ぐために、こまめに保湿やスキンケアを行いながら、良い状態を維持していきます。

蕁麻疹

蕁麻疹は、皮膚が蚊に刺されたようにぷっくりと腫れたような発疹や赤み、強いかゆみなどの症状が現れます。症状は、数時間~十数時間で落ち着いていきます。

原因

蕁麻疹は、原因によっていくつかに分類されます。
原因が特定できないものを特発性蕁麻疹と呼びます。蕁麻疹の7割が、特発性蕁麻疹に該当するといわれ、症状が1か月以内で治まる「急性蕁麻疹」、症状が一か月以上続く「慢性蕁麻疹」に分けられます。慢性蕁麻疹は、長期的な治療を必要とするので早めに医療機関を受診しましょう。
アレルギー性蕁麻疹は、小麦・卵・牛乳など特定の食品、ハウスダスト、薬品、花粉などが原因で蕁麻疹が起こります。
非アレルギー性蕁麻疹は、ストレスや不安などの精神的な要因、紫外線の刺激、冷房や暖房による急な体温変化などアレルギー以外の原因で起こる蕁麻疹です。

治療・対処法

アレルギー性蕁麻疹の場合は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を用いて治療を行います。また原因となるアレルゲンとの接触を避けます。皮膚の状態がひどい場合は、ステロイドを併用する場合もあります。

水ぼうそう

正式名称は「水痘(すいとう)」で、一般的に「水ぼうそう」と呼ばれています。皮膚に強いかゆみを伴う水ぶくれが、体の中心から全身に広がっていきます。

原因

水痘・帯状疱疹ウイルスが口や鼻から侵入して、潜伏期間10~20日を経て発症します。水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強く、一人が感染すると家族間や学校・保育園などの集団生活で一気に感染が広がっていきます。潜伏期間も周囲に感染する恐れがあり、咳やくしゃみなど飛沫感染や空気感染で感染が広がっていきます。

治療・対処法

症状が軽い場合は、自然に落ち着いていくのを待ちます。
強いかゆみの症状は、抗ヒスタミン薬、かゆみ止めの塗り薬・飲み薬で治療を行います。水ぶくれの状態が、かさぶたになっていくと感染力は低下していきますが、集団感染を防ぐために登園・登校は医師の判断に従いましょう。
水ぼうそうは、乳幼児のワクチン接種で予防ができます。

予防接種についてはこちら

水いぼ

伝染性軟属腫ウイルスが皮膚に感染して起こる皮膚疾患です。感染すると皮膚に小さないぼが現れます。かゆみはそれほどありませんが、掻きむしると水いぼの中にあるウイルスが指先に付着して周囲の皮膚に触れることで感染が広がります。特に皮膚のバリア機能が未熟なお子さまによくみられます。

原因

伝染性軟属腫ウイルスに触れることで感染します。水いぼはプールに入ること自体に問題はありませんが、浮き輪やタオル、ビート板の共有は控えましょう。

治療・対処法

水いぼは、ほとんどが数か月程度で体内に抗体ができて自然治癒していきます。
早期治療を希望される場合は、内服薬(ヨクイニン)等を使用することもあります。
水いぼをピンセットで除去する方法もありますが、この治療法は痛みを伴うため、皮膚科でよく相談した上で治療方針を決めるとよいでしょう。

おむつかぶれ

原因

おむつの中で便や尿によって発生したアンモニアが、蒸れて肌に刺激を与えます。バリア機能が未熟な乳幼児にとって、長く汚れたおむつをつけていたり蒸れている状態でいると肌への刺激でかぶれやすくなります。

治療・対処法

おむつかぶれを防ぐために、こまめにおむつ交換をしましょう。おむつ交換の時に、おしりふきなどでお尻を優しく拭いた後に軟膏などの塗り薬をつけます。かぶれや皮膚の炎症がひどい時は、亜鉛華軟膏やステロイド外用薬を併用する場合もあります。

子どもの体を洗う時の注意点

こんな風に体を洗っていませんか?

身体をタオルでゴシゴシと洗う

お子さまの肌は薄くて弱いので、目の粗いタオルで強く擦ってしまうと肌が傷ついてしまいます。

石鹸は使わずにお湯だけで洗う

お湯をかけるだけでは肌に付着した雑菌や垢、汚れをしっかり落とせません。

固形石鹸を肌に直接擦って洗う

石鹸は泡立てて使用することで、洗浄力を発揮します。泡立てた石けんを手にとりやさしく洗いましょう。洗浄力が高いのでしっかり汚れを落とすことができて、肌の状態も確認できます。

なるべく素手で洗うようにしましょう

なるべく素手で洗うようにしましょう身体を洗うときに市販のタオルやスポンジで肌を擦ると、皮膚の弱いお子さまは肌を傷つけてしまう恐れがあります。傷は、目に見えないほど小さなものでも、そこから雑菌が入り込むと炎症を起こします。皮膚のかゆみや湿疹、アトピー性皮膚炎のお子さまは、なるべく保護者の方が素手でやさしく体を洗ってあげるようにしましょう。

石鹸の泡立て方について

固形石鹸を泡立てるのが難しいと感じる方も多くいらっしゃるかと思います。石鹸は市販の泡立てネットなどを使えば、簡単にふわふわの泡を作ることができます。

  1. 泡立てネットと石鹸を用意する
  2. 泡立てネットをお湯に浸す
  3. 泡立てネットで石鹸を覆いかぶせるようにしたら、揉んで泡立てる
  4. 泡がホイップクリームのようになるまで泡立てたら、手に取ってお子さまの体を洗います

身体の洗い方について

十分に泡立てた泡を手に取って、爪を立てないよう注意して指の腹で身体を洗っていきます。首から下へ全身に泡を伸ばしていきます。この時に、強く肌を擦らないように気をつけましょう。
身体を洗ったら、お子さまに目をつぶってもらい顔も洗います。
最後は、ぬるめのシャワーをかけて身体についた泡を落とします。
お風呂上りに身体を拭いたらすぐに保湿剤を使ってスキンケアしてあげましょう。特に、入浴後5分以内に行うことで、高い保湿効果が得られます。

子どもの皮膚疾患についてのよくある質問

子どもの肌荒れを防ぐためにお勧めの保湿剤や保湿剤の塗り方がありましたら教えてください。

保湿剤は、豊富な種類の中からお子さまの皮膚の状態に合わせて選ぶ必要がありますが、軟膏タイプが基本です。季節や部位によりローションタイプなどを用いることもあります。
入浴直後の肌は水分が吸収されている状態なので、お風呂上りに保湿剤をすぐに塗るようにしましょう。その際、保湿剤を塗る人の手も綺麗に洗っておきましょう。時間が経つと乾燥してしまうので、お風呂上りに水分を拭いたらすぐに保湿剤をたっぷり塗るようにしてください。触って少しペタペタするな、と感じる程度の厚めに塗ってあげることが大事です。

蕁麻疹が出ているときはお風呂に入ってもいいのでしょうか?

蕁麻疹が出ているときにお風呂で体を温めるとかゆみ症状がひどくなる場合があるため、お勧めはしません。濡れタオル等で汗を拭う程度にとどめておくのがよいでしょう。

子どもがあせもをくり返します。日常生活で注意することなどあれば教えてください。

汗をそのままにしていると汗腺がつまってあせもができやすくなります。あせもができやすいお子さまには、以下の点に気をつけてあげましょう。
① 着替えやおむつ交換をこまめに行う
② 肌着や衣類は、通気性が良く刺激の少ない柔らかいコットンなどの素材を選ぶ
③ 部屋の温度は25~27度、湿度は40~60%に調整しましょう

とびひが広範囲に広がってしまいました。お風呂で石鹸を使って体を洗ってもいいのでしょうか。

石鹸を使って体を洗うときに、とびひの部分を強くこすらないように気をつけましょう。石鹸で洗っていて痛みを感じたときはシャワーだけにしておきましょう。
接触によって感染が広がるので、家族間でバスタオルなどの共有は避けてください。

水いぼは自然に治るのを待つか、ピンセットで取るか、どちらがいいでしょうか?

水いぼは、自然治癒までに長時間かかります。ピンセットで取る治療法は、麻酔テープを使います

子どもが何度も背中がかゆいと言いますが、特に肌荒れなどは無いため、どうしてあげたらいいかわかりません。

お風呂上りに体温が上昇していると血流が良くなって痒みの症状を訴えるお子さまもよくみられます。湿疹や炎症などの肌トラブルがみられない場合は、痒い部分を冷やす、保湿剤を優しく塗ってあげるなどすると症状が落ち着くことがあります。

DR.BRIDGE|クリニックホームページ作成

© 2022 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L631120

TOPへ